猫の口内炎 1 宮田のエッセイ館

猫の口内炎
猫の口内炎 1

 猫は身体の痛みをあまり表現しない。

 たとえば骨折や膵炎は痛みを伴うはずなのに、猫はジッとして痛そうにしない。外見上は痛みがほとんどなさそうである。

 骨折のレントゲン検査のために患肢を引っ張った時、身体を何度もくねらせて初めて痛みをアッピールする。

 膵炎はお腹が痛いはずなのに、痛みが分かりにくく、元気食欲がないので以前は診断に迷った。最近は院内検査で猫の膵炎が診断しやすくなった。検査で膵炎を疑ったら痛み止めを使う。すると猫はどんどん回復していくことがある。

 

 飼い主さんが猫を診察台の上に乗せて私に言う。

「エサを食べようとして口に入れるんですが、口の中に何かがひっかかっているようでエサを上手く食べられないんです」

 猫の口内炎でよく聞く禀告(りんこく)である。私は診察台に乗った猫の口をそーっと開けて中を覗いてみる。歯肉が真っ赤に炎症を起こし口臭が強い。口内炎だ。エサが炎症部位に当たると痛い。だから、お腹が空いていてもガツガツ食べられない。

「頭をさかんに振ったり、前足で口元を引っかいたりするんです」

 これも猫の口内炎でよく聞く禀告である。これらの動作は、口の中の痛みや違和感によって起こる。あくびをしても、口の中の炎症部位が引っ張られて痛いのだ。

 猫は身体の痛みをあまり表現しない。口内炎の猫は、エサを食べた時やあくびをした時などに痛みが顕在化するが、一日中ある程度の痛みを感じているはずである。痛みが顕在化した時、猫はよっぽど痛いのだ。そういう意味でも、私は飼い主さんに口内炎の猫を是非早期に治療してやって欲しいと願う。

 治療は主に抗生剤とプレドニゾロンを用いる。初発の口内炎は治療に反応することが多い。しかし再発する場合がある。初発から再発までの期間は2~3年だったり、数ヶ月だったりと様々だ。ここから再発を繰り返す段階に入ると、治療効果が上がりにくくなることが少なくない。

 多くの獣医師は、治療効果が上がりにくくなった段階で頭を悩ます。次に打つ手を『インターフェロンの全身もしくは局所投与、全顎抜歯、ある種の抗生剤・・・』などから選択する。

 しかし、最近私は猫の口内炎で頭を悩ます機会が少なくなった。私が開発したサプリメント(以下、宮田サプリ)が猫の口内炎に有効なのだ!

 Tさんの飼い猫は7才の時、口内炎のために来院した。抗生剤とプレドニゾロンで治療したが、再発を繰り返し、治療から再発までの期間がだんだん短くなってきて、ついに治療効果が一ヶ月しか持たなくなった。検査をしたらFIV抗体陽性であった。つまり猫エイズウイルスに感染していたのだ。私はTさんに説明した。

「このまま同じ治療を続けると、再発までの期間がもっと短くなって治療薬の切れ味も悪くなるはずです」

 つまり、猫の口内炎において獣医が頭を悩ませるパターンが容易に予測できた。そこで従来の治療を中止して宮田サプリだけを毎日猫に与えることにした。

 すると、宮田サプリを始めてからというもの、Tさんの猫は治療の必要がなくなるほど口内炎が良くなった。以後、Tさんは宮田サプリを購入するため定期的に来院するのみであった。治療を中止して宮田サプリを与え始めてから2ヶ月後、Tさんが猫の状態を私に伝えた言葉がカルテに書いてある。

『調子よい、口の中ピンク色、よだれ無し』

 宮田サプリを開始してから一年後、猫に口内炎の再発があった。治療をせずに一年間維持できたのだ。私は抗生剤とプレドニゾロンを一週間分Tさんに出した。それから一ヶ月後、Tさんが宮田サプリを購入するために来院した。Tさんは目を輝かせて言った。

「薬がすごく効いたんです。食欲がすごく出て、一年前とは比べ物にならないほど効きました。今回の薬は、前と同じ薬ですよね?」

「はい、以前と全く同じ薬です」

 以後、再びTさんは宮田サプリで猫の口内炎を維持した。

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