泣き捨て地蔵 2 宮田のエッセイ館

泣き捨て地蔵
泣き捨て地蔵 2

 この時、私はいつも、床の間の前で遊ぶ背丈が違う二人が見えた。兄弟か友達かの区別はつかない。私は楽しそうにしている二人と一緒に遊びたかった。二人は手が届きそうな所にいるのだが、彼らが遊ぶ夢世界に入ろうとしても入れない。私はいつも、もどかしさの中にいた。

 ひとしきり遊んだ後、二人はどこかに帰って行く。もし二人と一緒に遊んだら、彼らが帰る所に付いて行かなければならないのだろうか、と一抹の不安はあった。彼らが帰る場所がどこか分からないのだ。それでも、私は二人と遊んでみたかった。

 私は祖母の布団の中で聞いた。

「ねぇ、どこから来るの? 座敷わらしは」

 座敷わらしが帰る場所は、なぜか怖くて聞けなかった。

「どっから来たんだか・・・分かんねぇのよ。・・・だどもな、座敷わらしと道ですれ違うこともあんだ。・・・だからな・・・どっからかやって来んだな・・・」

「家の中に隠れてるのかな・・・」

「んだなぁ・・・分かんねぇなぁ・・・見ようとして見れるもんでねぇからなぁ・・・」

 座敷わらしが現れるのは栄えている家という。

「座敷わらしが見えなくなるとなぁ・・・その家は落ちぶれてな・・・屋根にぺんぺん草が生えんだぁ・・・」

 祖母は旧家に生まれた。江戸時代、遠野地方を治めた南部遠野氏の御典医を代々務めた家である。明治の頃、祖母が娘時代を過ごした屋敷は、御典医をしていた当時の家屋をそのまま受け継いでいた。

「家の前を通る人は、素通りしねえのよ。・・・門の前で止まってな、深ーぶかとお辞儀して、そんで行くんだぁ。・・・昔は、そういう家だったんだと」

「ねぇ、おばあちゃんの家に座敷わらしは出た? おばあちゃん、見た?」

「おばあちゃんは見たことねぇけどな・・・」

 祖母は済まなそうに言い、私は少しがっかりした。

「だどもな、おばあちゃんのおばあちゃんが見たんだ」

 私は祖母に座敷わらしを見ていて欲しかった。そうすれば、自分が座敷わらしに近づけて一緒に遊べるような気がした。

 祖母によると、屋敷には奇怪な言い伝えを持つ部屋が二つあった。一つは、人が寝ようとしても絶対に寝付けずに朝を迎えてしまう部屋。もう一つは、朝になって目が覚めると身体が180度回転していて、頭と足の位置が夜寝た時と逆になっている部屋である。

「おばあちゃん、その部屋で寝たことある?」

 

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